教育現場での相次ぐ処分
1999年8月「国旗・国歌法」成立による「日の丸」・「君が代」の一層の強制に対して、2000年に「日の丸・君が代」強制反対・ホットラインが発足。大阪での「日の丸・君が代」強制にかかわる人権侵害への相談活動を行ってきました。2003年から東京都では「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」との通達や従わない教職員への懲戒処分が行われるようになりました。
2013年に結成
大阪でも維新行政のもとで、2011年大阪府「国旗・国歌条例」が成立し、2012年の卒・入学式では「起立・斉唱」の職務命令違反で戒告36名、2013年には戒告16名・減給3名の懲戒処分が行われました。加えて被処分者5名の再任用拒否という事実上の解雇まで行われたことから、2013年にホットラインの相談活動を引き継ぎ、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク(略称:ひのきみ大阪ネット)が結成されました。
これまで被処分者で人事委や裁判闘争に立ち上がった教職員(ZAZAグループ)への支援活動を行い、また府教委や各教委への抗議・要求・交渉や毎年の卒・入学式での生徒・保護者・教職員への情宣行動を行っています。その中で被処分者うち2名の処分取り消しや1名の再任用拒否への国家賠償が最高裁でも確定(2022年)等の成果がありました。
しかし現在まで府教委・各教委の職務命令や起立・斉唱強制は継続されています。また生徒への愛国心の刷り込みや上からの命令には従う等の「戦争する国」への教育が進められています。こうした中で毎年の2月11日「建国記念の日」反対の集会や闘争総括集会、全国各地の「日の丸・君が代」強制反対の市民と連帯する全国集会等を開催し、教職員・保護者・生徒をはじめとして、広く市民に訴えを拡げる活動を継続しています。
保護者のみなさんへ
近代以降の戦争においては、戦争を正当化し、戦地に動員するために「愛国心」が煽られてきました。日本は1945年まで、朝鮮・台湾等を植民地とし、領土や資源を奪うために中国や東南アジアの国々への侵略戦争を行っていました。そのため学校で子どもたちに「愛国心」を高める手段として「日の丸」や「君が代」が使われました。そのもとで中国をはじめとしてアジアの人々が2000万人以上、日本でも空襲や原爆により300万人以上が犠牲となっています。そのためアジアや日本でも、「日の丸」「君が代」を好ましく思っていない人が少なからずいるのです。
しかし現在、再び、卒業式・入学式で教職員に職務命令による「日の丸」掲揚・「君が代」起立・斉唱の強制がされるようになっています。のみならず子どもたちにも「愛国心」を強要する教育が推し進められています。しかし現在の憲法では、個人の尊重や思想・良心の自由が保障されています。卒業式や入学式で「国歌斉唱 一同起立!」と司会が言っても、自らの思想や良心にしたがって「起立しない・歌わない」選択をするのは、憲法によって保障された基本的な人権です。もし「君が代」起立・斉唱等を強制されたと感じられたら、ぜひご相談ください。
生徒のみなさんへ
みなさんの参加する卒業式・入学式で「日の丸」がかかげられ、「君が代」斉唱が行われても、もし、あなたがいやだと思うなら、起立したり歌ったりする義務はありません。むりやり立たせたり、歌わせたりすることは誰にもできません。
あなたの心の中のことは、あなた自身が決めることなのです。何をして、何をしないか、自分たちで決めることができるのです。
卒業式・入学式に「日の丸」「君が代」が必要かどうか、これらは、皆さんに関わる大切な問題です。どうしたいか、自分たちの権利として学校に意見を言うことができます。
むしろ学校は、皆さんの意見を聞く機会を作らなければならないし、そこで出された意見を十分大切にしなければならないのです。それは、憲法19条「思想・良心の自由」や子どもの権利条約第12条に守られた、あなたの大切な権利です。
教職員のみなさんへ
1999年「国旗・国歌法」成立時に「強制しない」との付帯決議がされたにもかかわらず、東京では2003年通達、大阪でも2011年大阪府「国旗・国歌条例」と職務命令で、「君が代」起立斉唱が教育委員会により強制されるようになりました。大阪では現在に至るまで60余名の教職員が職務命令違反で処分されています。しかしZAZAグループを中心とした教員が人事委や裁判提訴で闘い、2名の処分撤回や再任用拒否国家賠償が勝ち取られています。
また2016年には大阪弁護士会が「君が代」起立・斉唱の命令は「人権侵害」であり、自らの思想や良心に従って「起立しない、歌わない」ことは憲法19条「思想・良心の自由」違反の人権侵害との勧告を出しています。さらに国連人権自由権規約18条でも、思想・良心・宗教の自由の厳格な保障が規定されています。国連の自由権規約委員会は、2022年11月に日本の「日の丸・君が代」強制は、この自由権規約に違反しているとの勧告を発しました。ILO/ユネスコ共同員会も、「国歌斉唱」を教職員に強制すべきではないと2度にわたって日本政府に勧告しています。
子どもへの「個人より国家」の愛国心教育が進めるために、抵抗する教職員には見せしめの処分の脅しを用い、上の言うことには黙って従う「モノ言わぬ」教職員集団にしてしまおうとしています。人事評価システムもこれを支えているといえます。
しかし、考えてみてください。公務員である教職員には、憲法遵守の義務があるはずです。学校の中で憲法が踏みにじられようとしているのを見過ごすことはできないはずです。人権侵害から子どもたちを守る必要があるのです。あきらめて声を上げなくなったとき、「日の丸・君が代」の狙いが達成されたことになるでしょう。強制反対を言い続け、可能なとりくみを続けていきましょう。それでも、校長や教育委員会による思想・良心の自由への侵害が行われたとき、ぜひホットラインに相談してください。ともに考え、行動していきたいと思います。