<抗議声明>大阪府・吹田市教育委員会による児童・生徒の「君が代」暗記調査に抗議する!
2023年6月13日
許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!改憲と教育破壊 全国ネットワーク
1.大阪府吹田市教育委員会は、2023年3月、全ての市立小中学校を対象に入学式や卒業式での国歌斉唱の実態を尋ねる一斉調査を実施していたことが新聞報道により明らかになった。報道によれば、吹田市教委は2023年3月9日、吹田市内全54校の市立小中学校長に対し、「卒業式・入学式について」と題した事務連絡文書を通知している。「2月定例議会に係る調査」とうたい、君が代と校歌の歌詞の暗記状況について回答を求め、「君が代の歌詞を暗記している児童・生徒の数を回答してください」として、入学式や卒業式での国歌斉唱の実態を尋ねる一斉調査を実施していたという。吹田市教委は、2年前の2021年3月にも議会側からの要請を受けて同様の調査を実施していたことも明らかになった。また、吹田市教委は、別の項目で、卒業式当日の国旗と校旗が掲揚された位置が確認できる写真と式場全体の様子が分かる写真についてもメールで提出を求めていたことも判明している。
2.吹田市内全54校の市立小中学校長に対して送った、「卒業式・入学式について」と題した「事務連絡文書」に添付された吹田市立全小中学校を対象に実施した「君が代の暗記調査回答シート」には、各学年の在籍者数や歌詞を暗記している児童・生徒の数を記入する欄が設けられ、調査の意図や確認の方法については記載されず、ファクスで即日報告するよう提出期限も明記されていた。「君が代の暗記調査回答シート」に対しては、一部の学校では担任教諭が子どもたちに挙手を求め、君が代の暗記者数を確認したり、音楽の担当教諭への聞き取りで大まかな人数を把握したりして市教委に回答した学校もあったという。吹田市内の全ての学校から回答が寄せられ、市教委は小学校と中学校で学年ごとの全体の割合を分析したとされている。
3.吹田市教委は新聞社の取材に対し、今回の調査を認めたうえで、吹田市議会で、吹田市議会文教市民常任委員会で委員の自民党市議から児童生徒の「君が代」の暗記状況の問い合わせを受け、市教委内部で検討した結果、学習指導要領も踏まえて調査が必要だと判断したと説明したとされている。自民党市議には結果のみを伝え、各校の個別データは知らせていないとしている。吹田市教委学校教育室の西慎一郎参事は「指導要領を踏まえて問題はないと判断していたが、調査方法などで学校現場を混乱させてしまった。配慮にかけた部分もあった」と釈明し、吹田市教委は2023年6月15日に組合側に一連の詳しい経緯を説明する方針だという。なお、議会で質問した市議は、新聞社の取材に対し、「政治信条に基づき、学校現場での国歌の認知度を知りたかった。調査には関わっておらず、コメントしようがない」と語ったと報道されている。
4.「君が代」斉唱に関する子どもたちの「君が代」暗記の実態を調べることは、吹田市教員の「君が代」斉唱の指導を調査確認し、吹田市内全ての教員に対し、「君が代」斉唱の指導をさらに強化するものである。また、今回の「君が代」暗記実態調査は、「君が代」暗記の実態を調べることによって、吹田市内のすべての子どもたちと教職員の日本国憲法が保障する「思想・信条の自由」・「内心の自由」を侵害するものであり断じて許すことのできないものである。
5.「国歌」(「君が代」)を暗唱させたり、「国歌」(「君が代」)斉唱を子どもたちに強制したりするのではなく、「国歌」(「君が代」)の歴史や歌詞の意味、「君が代」が歴史的に果たしてきた役割などを考えることを授業などで話し合うことこそが必要である。子どもたちが「君が代」起立・斉唱も含めて、「国旗・国歌」をどう考えどう行動するかは児童・生徒一人ひとりが深め決めることである。子どもたちの意見を聞くこと、「君が代」を歌うことが嫌だという子どもに強制することがないことこそが重要である。「市民的・政治的権利に関する国際規約」(「自由権規約」)18条2項は「何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない」としていかなる強制も禁じている。2022年の国連自由権規約委員会による第7回日本政府報告書審査では、日の丸掲揚や君が代斉唱に従わなかった教員が処分された件について、はじめての以下の是正勧告が出された。
38.委員会は、締約国における思想及び良心の自由の制限についての報告に懸念をもって留意する。学校の式典において、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することに従わない教員の消極的で非破壊的な行為の結果として、最長で6ヵ月の職務停止処分を受けた者がいることを懸念する。委員会は、さらに、式典の間、児童・生徒らに起立を強いる力が加えられているとの申立てを懸念する。(第18条)
39.締約国は、思想及び良心の自由の効果的な行使を保障し、また、規約第18条により許容される、限定的に解釈される制限事由を超えて当該自由を制限することのあるいかなる行動も控えるべきである。締約国は、自国の法令及び実務を規約第18条に適合させるべきである。
6.私たち、全国の教職員、退職教職員、保護者、市民の全国的ネットワークである『許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!改憲と教育破壊 全国ネットワーク』は、大阪府吹田市教育委員会による2023年3月(及び2021年3月)、吹田市内の全ての市立小中学校を対象に入学式や卒業式での「国歌斉唱の実態を尋ねる一斉調査」を実施したことにより、吹田市内のすべての子どもたちと教職員の日本国憲法が保障する「思想・信条の自由」・「内心の自由」を侵害するものとして強く抗議する。また、大阪府吹田市教育委員会は、この間の「国歌斉唱の実態を尋ねる一斉調査」の経緯と事実を吹田市議会などにおいて明らかにするとともに、吹田市内のすべての小中学生、教職員、保護者に対し、日本国憲法が保障する「思想・信条の自由」・「内心の自由」を侵害するものであったことを謝罪し調査を撤回するとともに、今後2度と調査を行わないことを強く求めるものである。
7.吹田市教委が、「実態調査」と別の項目で、卒業式当日の国旗と校旗が掲揚された位置が確認できる写真と式場全体の様子が分かる写真についてもメールで提出を求めていた事実についても、吹田市内のすべての小中学生、教職員、保護者に対し、速やかに謝罪し調査を撤回するとともに、今後2度と調査を行わないことを強く求めるものである。
8.大阪府吹田市教育委員会は、『許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!改憲と教育破壊 全国ネットワーク』に対し、この間の「国歌斉唱の実態を尋ねる一斉調査」の経緯と事実、および、吹田市教委が、「実態調査」と別の項目で、卒業式当日の国旗と校旗が掲揚された位置が確認できる写真と式場全体の様子が分かる写真についてもメールで提出を求めていた事実についても、速やかに事実を明らかにする文書を速やかに送付することを要請するものである。