大阪社会文化法律センター 2011.5.24
1.当センターは、1980年に設立され、大阪弁護士会に所属する弁護士等で構成され、基本的人権の擁護を中心に広く国民の権和と生活を守るべく法律的諸問題に対処してきた汝律家団体である。
今般、新聞報道等によれば、橋下徹大阪府知事が代表者をつとめる大阪維新の会は、大阪府下公立学校数員に対し、入学・卒業式などにおける「君が代J斉唱時の起立を義務づける条例案を府萬会に提出する方針であること、特に代表者は異常とも言うべき敵対心をあらわに、「立たぬなら府民への挑戦」(5/17朝日)、「複数回で免職」起立せぬ教員「辞めさせる」(5/17日経)と述べ、9月府萬会では免職させる条例案も提出する意向を表明した。さらに、同代表者は不起立者の「実名」を公表する(5/19朝日)こと、教育長が現場指導を強調したのに対し、「僕の立場で号令をかける」(5/19朝日)と述べ、あくまで条例化を目指す姿勢をみせている。
2.本件について法的な問題に入る前に、上記代表者の言動の政治的意味合いを指摘しなければならない。不起立者は圧倒的少数者であ尋ところ、その少数者が不作為の態様で不起立を示すことに対し、声高に「府民に対する挑戦」と叫び、「号令」を発しようとする姿勢は全体主義的支配者をまねようとするパーホーマンスであり、基本的人権尊重をうたう現憲法秩序にそれこそ「挑戦」するものというべきである。
3.「君が代」斉唱や起立の問題は多数裁判で争われていることは周知の事実である。最高裁判所では音楽教師が「君が代」ピアノ伴奏を命じられこれを拒否したことに対する懲戒処分を合法と藩定したが、斉唱、起立については未だ判断されておらず、つい先日東京高等裁判所は本年3月10日、都立学校教職員が「君が代」斉唱起立をしなかったことに対してなされた懲戒処分を取り消す判決を言い渡した。同判決は教職員らの不起立行為が「歴史観ないし世界観又は信条及びこれに由来する社会生活上の信念等に基づく真摯な動機によるもの」と帯定し、この行為に対し懲戒処分を科することiま社会観念上 著しく妥当を欠き不適浜であると判示している。
本件条例は処分を科す条例と後に自動的にセットされることが予定されており、上記東京高裁判決でいえば、かかる条例こそ「社会観念上着しく妥当を欠き不適牡である」 というべきである。
4.そもそも、「君が代」の問題は単なる「国歌Jの問題ではなく、我が国の犯した戦争の歴史と密接に結びついているがために「思想良心の自由」の問題となっているものであり、かかる精神的自由権は優越的地位を与えられる基本的人権であって、その保障があるか否かは民主主義社会であるか否かの分岐点を示している。
5.もし、「君が代」斉唱起立を強制する条例が成立したとすれば、憲法19条思想良心の自由を侵害して違憲であるとともに、条例が「払律の範囲内」で制定できるとする憲法94条にも違反し、達意無効と考えられる。しかし、無効であっても存在すれば物理的強制力としてそれこそ社会と敵対する悪法としてしか存在しえない牡であって、教育社会に大きな振乱を招き、同腹乱は生徒子ども達の教育を受ける権利を侵害する事態を招くものである。
「大阪維新の会」以外はこれら事情をよく理解しているからこそ、「君が代条例他会派そっぽ」(5/20朝日夕刊)を向いているのであって、歴史的悪法に手を染めないうちに「大阪維新の会」は直ちに本条例提出をやめるべきである。・現在学校教育に求められているのは、「しめつけ」の強化ではなくもっと自分を大切に、自由でのびのびとした
創造性豊かな教育です。
以上