「ひのきみ」大阪ネットも呼びかけ団体として加わっている「『国旗等損壊罪』反対連絡会」の主催による上記の集会が東京都文京区で開催されました。以下は、その第1部である澤藤統一郎弁護士の講演をまとめたものです。この問題を考える上でたいへんに参考になるお話です。(ただし、本まとめの文責は「ひのきみ」大阪ネットにあります。)
集会では、澤藤藤一郎弁護士が講演を行い参加者からの報告がありました。以下に澤藤弁護士の講演の概要を貼り付けています。
また、「反対連絡会」が作成したリーフレット(東京版とそれをもとに一部分だけ変更した大阪版があります)を貼り付けています。ダウンロード可能です。ぜひ、活用をお願いします。集会や街宣だけでなく、高校生や大学生にも読んでもらいたいと思います。そして、世論を盛り上げましょう。
またさらに、「国旗等損壊罪」に反対する署名活動も行っています。チェンジオルグ署名のアドレスはこちらです。 ⇒ https://x.gd/3aU9H
印刷したリーフレットの郵送を希望される方は、以下までお申し込みください。
(東京版)については、w.hidekiyo@gmail.com 渡部
(大阪版)については、kouiti752@gmail.com 山田 に申し込んでください。
人手不足ですので、基本は50部単位(例:50、100、150、200・・・・等)です。
送料を頂きます。振込用紙を同封しますので、それで振り込んでいただきたいと思います。
【第1部】4月11日集会 澤藤藤一郎弁護士講演の概要 (文責:「ひのきみ」大阪ネット)
講演:国旗損壊罪の新設に反対する――民主主義と自由の観点から
講師:澤藤統一郎さん(弁護士)
1. はじめに:国旗損壊罪の本質とは何か
本日お話しする「国旗損壊罪(または国旗侮辱罪)」の新設とは、結局のところ、国旗が象徴する「国家」という抽象的な組織や人間の集合体に対する、象徴的な表現行為を犯罪にするということです。
国家そのものに唾を吐いたり、火をつけたりすることは物理的にできません。しかし、国家の象徴である国旗に対してなら、唾をかけたり燃やしたりすることができます。つまり、国旗損壊罪とは、国家に対する否定的な意思表示を刑罰で抑え込もうとする試みなのです。
私は愛国心が素晴らしいものだとは思いません。特に、日本という国に対する愛国を強制する言論には強い違和感を覚えます。刑罰の威嚇をもって国家の権威や尊厳、国民の敬愛の感情を保護する必要があるのか、その副作用について考えていかなければなりません。
2. 日の丸の歴史性と国家権力の対立図式
日の丸のデザインを見たとき、単なる旗と思う人と、日本の国の象徴と思う人がいます。日の丸は「君が代」と一対であり、紛れもなく「国体(天皇制を中心とした国家体制)」のシンボルです。
戦後、ドイツやイタリアは旗を変えましたが、日本だけが同じ旗を使い続けています。日本国憲法によって国の構成原理は変わったはずですが、戦前の国体に郷愁を持つ人々にとっては、日の丸は神聖なものであり、その尊厳を刑罰で守ることは当然だと考えられています。しかし、学校現場などに日の丸を持ち込み、その尊厳を強制することは、人権の軽視に他なりません。
この問題を巡る図式は、「国家権力(権力主体)」対「我々一人ひとり(人権主体)」の対立です。国旗を損壊する行為を犯罪にすることは、国家権力の円滑な行使を刑罰で保護し、個人の尊厳を縮小させることを意味します。
3. 国旗損壊罪新設がもたらす「負の側面」
国旗損壊罪を新設しようとする勢力は、国体に郷愁を覚える人々、侵略戦争や植民地支配に無反省な歴史修正主義者、排外主義者たちです。
この法律には多くの名前を付けることができます。「国体擁護法」「歴史修正主義容認法」「軍国主義強化法」「愛国心強制法」「全体主義促進法」、あるいは「非国民あぶり出し法」です。
本来、犯罪を成立させるには「立法事実(どうしても犯罪として処罰しなければならない事情)」が必要です。しかし、愛国心は刑罰で強制すべき対象ではありません。この法案は、日本国憲法が掲げる民主主義や人権を尊重しようとする立場からは、強く反対せざるを得ないものです。
4. アメリカ連邦最高裁判決の教訓
アメリカの歴史から学ぶべき点があります。
- バーネット判決(1943年): 第二次世界大戦の最中に、「正しいとされるイデオロギーなど存在しない。誰もが自由に思想を持ち、表現してよい」という指針を示しました。
- ジョンソン事件: ベトナム戦争反対のデモで星条旗を焼いた人物に対し、連邦最高裁は「無罪」を言い渡しました。判事たちは「旗を焼く行為には葛藤があるが、自分が大切にするアメリカの中心的な存在理由は自由である。この自由は、国旗を焼くような人物の表現も認めている」と結論づけました。
国旗という象徴と国家の関係は、時代によって変わります。ナチスのハーケンクロイツは全体主義の象徴であり、星条旗もベトナム戦争以降は応報や虐殺の象徴ともなりました。日の丸もまた、侵略戦争や天皇制ファシズムの象徴であった歴史を持っています。そのような旗への不敬を処罰の対象にすることは、歴史を巻き戻す行為です。
5. 自民・維新の連立政権合意とセットになった攻撃
問題の発端の一つは、自由民主党と日本維新の会の「連立政権合意書(令和7年10月20日付)」にあります。そこには「令和8年通常国会において日本国損壊罪を制定し、外国損壊罪のみ存在する矛盾を是正する」と明記されています。
これまでは公明党が自民党の保守的な主張にブレーキをかけてきましたが、維新の会は逆にアクセルを踏む存在です。高市氏をはじめとする国家主義者たちは、国旗損壊罪の新設を悲願としています。
これは単独の問題ではなく、スパイ防止法、武器輸出の解禁、防衛力の強化、憲法改正、皇室典範改正、選択的夫婦別姓の阻止、外国人政策の厳格化などとすべてセットになっています。日本国憲法の体制で安住していた国民に対し、「戦争のできる国家」へと構造を転換しようとする大きな動きの一部なのです。
6. 刑罰なき「理念法」であっても危険な理由
「罰則がなければ実害はないのではないか」という意見もありますが、それは間違いです。 1999年に「国旗国歌法」ができたとき、当初は「義務付けるものではない」と説明されていました。しかしその後、2003年の「10.23通達」に見られるように、学校現場で強力な強制が行われるようになりました。
罰則のない理念法は、権力が「犬笛」を吹いているのと同じです。「国旗を尊重しない者は非国民だ、愛国者なら叩いてもいい」という空気を作り出し、社会的な同調圧力によって表現行為を萎縮させます。刑罰がなくても「愛国強制法」として機能するのです。
7. 現行法との関係:器物損壊罪等での対応
そもそも、他人の国旗を焼いたり破ったりすれば、現行法でも処罰可能です。 かつて沖縄の国体で日の丸を焼いた知花昌一さんは、器物損壊、威力業務妨害、建造物侵入で有罪(執行猶予付き)となりました。
もし新たに「国旗損壊罪」ができ、それが現行法と異なって適用される場面を想定すると、「自分が買った自分の国旗を、自分の敷地内で、誰にも迷惑をかけずにひっそりと焼く行為」までも処罰対象にすることになります。そんな法律を作る必要がどこにあるのでしょうか。
